最近、私が勤める研究所は、若い命をひとつ、自死によって失いました。
私は、その人と面識が無いのですが、その人を悼むつぶやきを見た時に、
「あっ。」
と思いました。
つぶやきの内容から、思い出す人がありました。
昨年私は、20代の所員を対象に様々な項目に渡るアンケートを行ったのですが、その時に、その人は珍しい趣味を書いていて、私はよく覚えていました。
「あの子が亡くなったんだ。」
約1年前のアンケートを見返しました。
アンケートから読み取れる生活風景は、楽しそうでした。
もっとも、1年あれば、何が起きても変わっても不思議ではありません。
それから、その人のSNSを尋ねてみました。
SNSのお友達は、多くが会社の人でした。
その時に、もうひとつ、思い出されることがありました。
今から10数年前でしょうか、私は、いい歳をしてグレて、あんまりちゃんと会社に来ませんでした。
その頃、新しくやってきた上司が、面談の中でこんなことを私に話しました。
「私みたいな古い人たちの中には、結婚していない部下を持つってのは、その子のお父さんやお母さんから、お子さん、お嬢さんをお預かりしているって感覚があるんだよ。
それが何歳であってもね。
あんたは、うるさいって思うかもしれないけど、そんな考え方もあるって覚えておいて。」
と。
「お子さんをお預かりしている。」
なんて、感じづらい、時代に合わない感覚かもしれないけど、徒弟制度が残っている場(伝統芸能など)では今でもそうで、これだけたくさんの時間を過ごす「職場」という場では、覚えておいてもいい話かもしれないと思いました。
誰かが自死をすると、その周りの何人もの人が
「何で言ってくれなかったんだよ。」
「昨日まで普通だったのに。」
「全然そんなふうに見えなかった。」
というようなことを、言います。
それは、本人だけが悪いわけでもなく、友達だけが悪いわけでもない。
「たまたま」、そういうことを話せる、そういう姿を見せられる/見せてもいい場所、機会が無かっただけなんです。
このブログは、主に「未来予測」や「イノベーション」について書いています。
なぜ、ここで、この話に私が触れたのでしょうか。
意図的/計画的なイノベーションの始まる場というのを、ざっくり2つに分けると
・どんな突飛な事でも受け入れられる、柔軟な雰囲気
・どんな突飛な事でも、可能性があるならばやらないと死ぬかもしれない修羅場
このいずれかです。
「今からイノベーションをしよう。」
と言って、
「だから、修羅場にするよ。」
なんて選択ができるワケがありません。
…とすると
「どんな突飛な事でも受け入れられる、柔軟な雰囲気」=安心、信頼の場
を作らないことには、イノベーションは始められないのです。
いくつかのウェブサイトから、同じようなことを言っているくだりを、抜粋紹介します。
★ 安心・信頼を土台にしたチームのなかでは、解き放たれた思考がいきいきとめぐり始め、触発され、結びついていきます。
http://www.scholar.co.jp/corporate/ti/
より引用
★ どのような発想であっても受け入れてもらえるという安心感は強い信頼を生み出し、強固なチームを作り上げるための土台となります。
https://bizhint.jp/keyword/37422
より引用
★ 集団の中で安心できると、自然発生的に信頼・協力できる関係性が構築されていきます。シネック氏は、「安心感が、信頼と協力を生む。」と伝えています。
http://3media.biz/entrepreneur-leader/choices-great-leaders-make.html
より引用
★ チームの生産性を左右するのは“安心感” 多様性を認めイノベーションを生み出す、真の働き方改革
http://logmi.jp/211647
より引用
あなたが今いるところに、安心、信頼、そういうものはありますか…?
辛い時に、そこで泣けますか…?
具合が悪い時に、「顔色悪くない?」って言ってくれる人がいますか…?
「イノベーティブな集まり」は、人にやさしい。
そう思います。
最後に、宮城まり子さんの言葉をひとつ、引用します。
「やさしくね、やさしくね、やさしいことはつよいのよ」
つよく、なりたい。
R.I.P.
ご無沙汰してます。
私も10年位前、会社で友人と呼べる数少ない一人を、自死で失いました。毎日昼職を一緒に社食で食べ、仕事や組織に対する悪態もつきあう間柄だったので、事前に助けられなかったかと悩みましたが、個々人の本音の最後の部分を窺い知るには、かなり繊細な感受性が必要と学びました。
ご冥福を、お祈りします。
イノベーションの場として会社がレースに取り組む時に、「どんな突飛な事でも、可能性があるならばやらないと死ぬかもしれない修羅場」が大切という、昔ながらの考えがまだまだ抜けきれていない感があります。個人の粘り強さを鍛えるのに有効な局面はありますが、組織としてのイノベーションを生み出すには逆効果の面があることを、マネージメント層がどう考えるかが重要な時代だとおもっています。
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こんにちは。ヨシムラです。
お友達を亡くされた心の傷に、神様の手が触れて癒されますようにお祈りします。
修羅場で育まれるものもありますが、できるだけ修羅場は避けなければならないですよね。
たまに「マッチポンプ」じゃないですけれども、修羅場になるまで放っておいて
「修羅場だ修羅場だ!」
と、まといを担いで、周りを巻き込んで騒ぐ人は困ります。
(-_-;)
弊社は上から下まで、技術屋が決めて動かす部分がとても多いのですが、今一度「藤澤武夫」の役を誰がやっているのか、育てているのか、そういうことを考えてほしいと、最近は思い始めています。
コメント、ありがとうございました。
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